第一話 |
レスキュー隊の日々のスケジュールは過酷だ。 車両や資機材、通信機器の点検に始まり、様々な救助訓練、さらに基礎体力をつけるための筋力トレーニングなど、休む暇もない。 事故は、はしご登はんの訓練中に起こった。 訓練所のはしごを登っていた畑山が、足を滑らせて落下した。 幸い、それほどの高所ではなかったものの、コンクリートの地面に、そのまま落下してしまった。 「おいっ ! 大丈夫か畑山っ ! 」 岡田が駆け寄って抱き起こすと、畑山は顔をしかめながらも笑って見せた。 「す、すんません隊長…。俺、隊長に言われた通りバランス悪かったみたいっすね、へへ…」 「馬鹿 ! そんな事より、立てるか?…」 「は、はい…足は、大丈夫みたい、っす…でも、右手が…」 体勢を立て直し、自ら立ちあがろうとしたが、力のはいらない腕では支えきれず倒れてしまった。 「無理するな。骨折してたら事だ。肩につかまれ」 岡田は、畑山の左腕を自分の肩にかけさせ、そのままゆっくりと立たせた。 「いつっ!」 「なんだ…左腕も駄目なのか?」 「み…みたいっす…」 「そうか…」 岡田は、畑山をおぶって歩き出した。 「どうだ ? 」 「はい、足は大丈夫みたいですが…やっぱり、右腕が…」 畑山は弱々しく呟いた。 「副隊長、すまんが後の訓練を頼む。俺はコイツを医務室に連れて行く」 そう言うと、岡田は医務室へと向かった。 「…隊長、すみません。自分のせいで…」 「気にするな」 「救助隊員がこのザマじゃ、シャレになりませんよね…つっ… !」 「いいから黙ってろ」 医務室でベッドに座り込む頃には、畑山も大分落ち着きを取り戻していた。 レントゲン撮影の結果…左腕は打撲で済んでいたが右腕は、やはり骨に少しひびが入っており、しばらくは固定が必要との事だった。 「あっ、あの ! じゃあ、俺…訓練できないんですか… ! ? 」 勢い込んで尋ねる畑山に、医者は苦笑して答えた。 「はは…残念ですがね…ま、これくらいのひびだったら二週間もかかりませんよ。腕を動かさず、安静にしていれば、の話ですけどね。それでも、直ぐには訓練に戻れませんよ」 「そうですか…」 畑山は、肩を落としてしょぼくれている。 「なんだ畑山、お前いつからそんなに訓練が好きになったんだ」 「ああ、ひどいなぁ隊長 ! 俺は前から訓練には真剣に取り組んでるじゃないですか ! 」 「わかったわかった。ま、しばらくは無理をせず、完治させる事だけを考えてゆっくりしとけ」 そんな二人のやり取りに、医者が頷いた。 「それが一番ですね。ギプスが取れても、しばらくは無理な訓練をせず、慣らしていくことです。左手も、ひびこそ入っていませんが、かなり強打していますから無理なさらないようにしてください」 「はいっ ! 先生、どうもありがとうございました ! 」 畑山は、現状に納得したのかペコリと頭を下げた。 「じゃあ岡田さん、すみませんが彼を着替えさせてやってくれませんか。私はギプスの方の準備をしますんで」 そういい残して医者が消えた後、岡田は畑山の部屋から部屋着やタオルを取ってきた。 「す、すみません、隊長…こんな事まで…」 「気にするな。誰でも一度や二度は経験することだ」 岡田は、そう言って畑山の制服のジッパーを下ろした。ベルトを外すとムンっとした独特の香りが鼻をつく。 体中、訓練で流した汗と、事故のショックによる脂汗にまみれている。 右腕に刺激を与えないように、そっと上着を脱がせ、岡田はタオルで汗をぬぐい始めた。 「……」 畑山は、なすがままに背を丸め、神妙な面持だ。 傍から見ると童顔で幼い印象の畑山だが、体は筋肉質で…逞しい胸の上で、意外に大きく、黒ずんだ乳首がぷくりと膨らんでいる。 岡田は、そんな畑山の体に見惚れてしまう自分をたしなめながら、わざと乱暴に体を拭き始めた。 「あ……っつ」 胸を拭いていると、畑山が身体を微妙に震わせ、小さく声をあげた。 「どうした。痛いのか?」 「あ、い、いえ…ちょっと、くすぐったかったもんですから…」 畑山は、顔を赤らめ俯いている。 「それだけ余裕があるんなら大丈夫だな。手、少し持ち上げるぞ」 岡田は、じっとりと汗のにじんだ腕から、濃い腋毛の茂みまで丁寧に拭いていった。 畑山は、痛みからなのか…それとも、恥ずかしさからなのか…身を縮め、岡田に体をゆだねている。 体を拭き終わると、岡田は畑山の作業靴を脱がせた後、さらにズボンを脱がせようとした。 「あ…、た、隊長、その…」 「なんだ ? 」 「い、いえ…なんでもないです…」 「ちょっと腰を浮かせて…ああ、無理か」 岡田は、負担にならないように畑山の腰の下に手をあてがい、そっと持ち上げた。 [続きを読む] [小説TOP] |